事業仕分けで衛星打上げ・HTV 予算が 1 割減,疑問の声も
前エントリで予算の話に抵抗を示しておいて突然予算の話もなんなのですが,日本の宇宙開発全体,ひいては科学技術行政全体にかかわる話ですので,取り上げたいと思います.
行政刷新会議の事業仕分けがバッサバッサと科学技術予算を削減し,まさに文化大革命 (悪い意味で) と呼ばれているようですが (行政刷新相も自らそう発言していたそうですが),宇宙関係では,GX ロケット,HTV,平成 24 年度以降の衛星打上げ,の 3 つがピックアップされていました.
そして,GX ロケットに 1 時間,HTV と衛星打上げにいたってはまとめて 1 時間という恐ろしく短い時間で審議が行われ,どちらも 1 割減という結果になりました.
これでも,他の科学技術政策に比べればましなほうで,スパコンや SPring-8 などの大型予算はさらに壊滅的な打撃を受けています.とはいえ,宇宙関係の 1 割減,これは相当に厳しい.もちろんこの中には,はやぶさ 2 や Bepi Colombo,小型科学衛星,ASTRO シリーズ,ALOS シリーズなども含まれています.
戦後,航空技術開発が 7 年間禁止されたことによって日本の航空機技術が壊滅したことをふと思い起こします.
科学技術政策のあまりの粛清ぶりに,文部科学省は事業仕分けの対象事業に関して 12/15 まで国民からの意見を受け付けています.送り先は事業ごとにわかれており,HTV や衛星打上げに関する送り先もあります.
また,旧帝大学長ら,ノーベル賞受賞者らが緊急提言を行ったほか,11/27 には「立花隆 緊急集会 −すばるが止まる−」という緊急集会を開催するなど,危機感が強まっています.
- ノーベル賞・フィールズ賞受賞者による事業仕分けに対する緊急声明と科学技術予算をめぐる緊急討論会 - 東京大学 大学院理学系研究科・理学部
- http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091124-00000005-maip-soci
- 記者会見「学術・大学関連予算について」の開催 【共同声明】大学の研究力と学術の未来を憂う -国力基盤衰退の轍を踏まないために- | 東京大学
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20091126ddm001010019000c.html
スパコン凍結に関しては研究者からの批判が相次ぎ,判定を見直す動きも出ているようなので,宇宙関係も国民の声次第かも知れませんが…少なくとも日本の科学技術全体に暗雲が立ち込めているようです.
追記 (2009-11-27):なんと,ここへ来て,GX 再審議の話が出ています.
財務省は「仕分け人」用資料に「ロケット本体開発に700億円もの巨額の税金が投入されてきた。その点からしても、研究は凍結(廃止)することが妥当」と記載した。
財務省主計局の担当者は「700億円は文科省から聞いた」と説明。文科省担当者は「700億円の数字が主計局資料にあるのは当日知った」としている。
だが、700億円のうち430億円は、米国側や宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同開発を行ってきたIHIなどの民間企業が投資したものだった。仕分けの現場で、文部科学省の担当者が民間投資額が430億円だと説明したが、税金投入額700億円の訂正はなかった。
一方、17日の仕分け作業に先立つ11月上旬に、GX打ち上げを担当する米ユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)社から、少なくとも2、3機のGX使用の意向が政府の宇宙開発戦略本部などへ伝えられていた。だが、この説明はなく、仕分けでは「ビジネスとして成立しない」との意見が大勢を占めた。
これらの点をIHIは政府側に抗議している。
この分だと,HTV や衛星打上げ,そしてその他の事業の審議の信憑性も,鵜呑みにして良いものか….