2005 年度年次要覧

2005 年度年次要覧が出ました.実はこの文書,情報の宝庫でして,いつも大変重宝しています.

2005 年度ということで情報が少し古いですが,はやぶさについては以下のようにまとめられています.

MUSES−C」は工学実験衛星シリーズの3機目として,今後の太陽系探査において重要となる太陽系天体からのサンプル回収ミッションに必要な技術の修得と実証を目的としており,2003年5月9日,M−V−5号機によって内之浦宇宙空間観測所から打ち上げられ,「はやぶさ」と命名された.「はやぶさ」は小惑星1998SF36(イトカワItokawa)を目標天体としており,太陽系探査機用主推進機関として電気推進系(運転時間寿命が16,000時間を越えるイオン・エンジン・システム)を搭載し,自律航法(小惑星への接近・ランデヴー・着陸における自律的誘導制御),サンプリング技術(小惑星表面からの試料の採取,収納,密閉),及び脱出速度以上の超高速による地球大気圏再突入技術実証等が具体的な実験目的であった.「はやぶさ」は2005年9月12日にイトカワにランデブーすることに成功し,CCD カメラ,X 線スペクトロメータ,赤外分光計,LIDAR 等による小惑星のその場観測を実施することに成功した.超小型のロボット着陸機ミネルバは,11月12日のリハーサル降下時に分離されたが,表面に着地させることはできなかった.しかし,同機との交信やデータの受信は正常に行われ,機能は全て確認できたところである.
はやぶさは2005年11月に5回にわたって表面での降下を試み,3回の接地と1回の着陸に成功した.とくに横方向の残留速度の精密な制御については,約1㎝/秒の超高精度の航法・制御・誘導に成功したところである.
なお,「はやぶさ」は国内各大学,研究機関との協力のみならず,米国NASA との密接な協力によって進められてきた.これには,NASA DSN(深宇宙局網)による追跡支援,再突入カプセルのNASA ARC(Ames リサーチセンター)における耐熱材料試験,各科学観測に関する日米協力等が含まれている.さらに再突入カプセルの回収場所として豪州のウーメラ地区が選ばれ,豪州との回収に関する協議が行われている.
はやぶさ」は2005年11月26日に正常に離陸を終えたところで燃料もれをおこし,その後7週間にわたり交信が不通になったが,2006年1月に再捕捉され,現在は安定な飛行をとりもどしている.
第1回目の着陸時に少量の試料が捕獲されている可能性があり,これの回収を目的として,2010年6月に地球へ帰還させるべく,運用を継続している.
さらに,この計画によって持ち帰られる予定のサンプルの分配,分析,保管の体制と施設の建設が行われている.

他にもいろいろ面白い話が載っています.

次期近地球型小天体ランデブー・サンプルリターンミッションの設計・開発
はやぶさ」に続く小天体の候補として,既にスペクトル型が判明している近地球型小天体で,それぞれタイプの異なる天体にランデブーし,全球マッピング後にタッチ&ゴー式でサンプル採集をし,地球帰還するミッションの設計と基礎開発を行っている.9年程度で二つの小惑星に訪問し,サンプルリターンする例を始め,複数の解が存在する事が分かった.また,サンプリング装置,小惑星表面探査ローバ,オービターからの科学観測,誘導,制御,航法の課題等もサブグループ単位で開発・研究を進めている.

これははやぶさ後継機についてですね.

小天体テザーサンプリングのためのシステム検討
次期小天体探査ミッションにおいて,ITOKAWA 等のS 型小天体よりも柔軟性の高いC 型小天体でのサンプリングが検討されている.また,サイエンスの立場から,はやぶさサンプリングと比べ,より深い場所から,深さ情報を保持したまま,よりたくさんのサンプルを採取することが求められている.これを踏まえて,はやぶさサンプリングにテザーを加えたテザーサンプリングを新たに提案し,そのフィージビリティを検証している.これに対応したリール機構を新たに開発し,無重力下でテザーの引込・回収実験を行なった.現在,ペンシルロケットを用いた射出・挿入実験を計画している.

ぺ,ペンシルロケット!?

14)「はやぶさ」における国際協力
2003年5月に打ち上げられた,世界初の小惑星サンプルリターンを試みる「はやぶさ」(MUSES−C)探査機は,2004年5月に地球スウィングバイに成功し,小惑星イトカワに向かって順調に飛行を継続し,2005年9月12日に目標のイトカワに到着し相対的に静止した.この到着にいたる過程では,MOU に基づき,NASA DSN 局を利用して探査機の追跡を行い,探査機で取得した光学情報をもとに正確に目標に接近・到着させることができた.また,イトカワ近傍での運用にあたっては,MOU によるほかNASAJPL からの申し出で追跡時間の大幅な拡大がはかられ,当初の予定時間を大幅にこえて支援を受けることができた.日米合同科学者会議は,イトカワ到着前,到着後の着陸点選定会議,および近傍フェーズ終了後に開催され,科学者間の分担や運用・解析方法,ならびに成果発表方法について協議を行った.「はやぶさ」はイトカワからの離陸後に燃料もれを起こし,それに続く探査機の損傷と運用上の問題から,飛行期間を延長して地球帰還の可能性を探っている.このため豪州政府との間での「外国打ち上げの物体を回収する許可」については,今年度に契約額の半額を払い込み,以降は探査機運用の推移をみて対応することとした.

なるほど,オーストラリアにもう半額払ってるんですねえ.

他にもwktkな研究内容がいっぱいです.論文情報なども出ていますね.Wiki のほうがなかなか収集できてないのでこちらをご覧下さい.