ついにはやぶさ明日帰還開始,ただしイオンエンジンに新たな不具合も

本日 16:30 より,はやぶさ帰還に向けた記者会見が開かれました.明日(4/25)17 時に帰還開始を宣言するそうです!*1

ただし,イオンエンジンに新たな不具合が見つかったことから,当面はイオンエンジン 1 基のみでの巡航となり,状況はこれまでになく厳しいといえます.

記者会見の内容を松浦さんが報告して下さっています(ああ,久しぶりですね.はやぶさリンク).マスコミ報道よりも詳細かつ正確なので,先にこちらをご一読ください.

A〜D の 4 基のイオンエンジンについては,

  • A,C:動作特性が安定しない.
  • B:4/20 に中和電圧が上昇.一部性能低下や動作不安定がある.
  • D:正常運転が可能

という状況であるため,当初の 2 基運用をやめ,スラスタ D とホイール常時回転での運用を行うとのことです(一部の「2 台が故障して停止」というような報道は不正確です).

記者会見報告を読む限りでは,B は壊れたというよりは不安定ということのようですが,2 台同時運用を行うと温度が上昇して寿命に影響するそうなので,ここは 1 台の運用でいくのは賢明な判断でしょう.ただ,D は設計寿命をはるかに超える運用となり,また残ったホイールも常時回転となると磨耗したり過熱したりする危険性が増します.スラスタ 1 基でも帰還軌道が存在するというのは以前から言われていたことですが,まさかその最後の手を使うことになるとは.スラスタもホイールも 1 基ずつということは冗長性ゼロですから,まったくもって賭けです.しかし,そこに賭ける価値はあると管理人は思っています.

川口「ぼくは、決して楽観できないと考えている。『帰還できないわけじゃない』。(國中教授の方を見て)この人はそうは思っていないみたいだけれども」
國中「川口先生はこう言っていますけれど、僕としてはまだ打つ手がいくつか残っていると考えています」

川口先生,非常に慎重ですね.國中先生の言葉は頼もしい.

なお,MYCOM の記事も,プレゼンスライド写真がありおすすめです.

当面はDスラスタのみで地球に向かうが、最後までDのみで行くと決定したわけではないようだ。Bの使用や、場合によってはA/Cを使うことも考えるという

寿命については「地上では20,000時間の実証もしている。この時は途中で試験をやめたので、実際はもっと動くかもしれない」(國中均教授・宇宙輸送工学研究系)という。よりクリティカルなのは残り1基しかないリアクションホイールのほうだが、スピン安定にしてホイールを停止させるなど、なるべく温存する方法が考えられているそうだ。

スピン安定!その手があったか.


メディアの報道一覧です.

黄信号赤信号の話は朝日の記者が出してきた話なのになあ….

関連スレです.


追記:JSpace では松浦さんの了承を受けて今回も怒涛の勢いで英訳が作成されています.お疲れ様です!

*1:といってももうはやぶさは加速しているわけで,何かが変わるわけではないそうです.単にマスコミの要望にこたえたもの.