「異形の惑星」

系外惑星の話つながりということで,この分野に関する格好の入門書.

異形の惑星―系外惑星形成理論から (NHKブックス)

異形の惑星―系外惑星形成理論から (NHKブックス)

以下,ネタバレ含みます.


90 年代後半からにわかに盛り上がってきた系外惑星探索.なかでも「ホット・ジュピター」や「エキセントリック・プラネット」などの「異形の惑星」の姿は,我々の惑星に対する従来の理解を足元から揺るがしています.本書は,系外惑星の検出方法に始まり「異形の惑星」の想像を絶する実態,発見をめぐる科学者たちのドラマ,見えてきた新しい太陽系形成理論,そして生命居住可能地球型惑星の存在確率の推定と,今まさに進行中の分野の最前線を熱く語っています.個人的には惑星の検出方法の話が非常に興味深かったですね.中盤の太陽系形成理論の洗い直しは,いまだ発展途上の理論のせいもあってか素人にはやや退屈な部分もありますが,全体を通して惑星科学のフロンティアに対峙している著者のwktk感が強く伝わってきます.

この本を読んで改めて驚くのは,この分野のここ数年の進歩の速さ.この本が上梓されたのは 2003 年ですが,ハビタブルゾーンに存在する地球型惑星も近いうちに見つかるだろうというようなことが書いてあります.当時の観測技術で引っかかるのは異形の惑星ばかりで,地球型惑星は未だ射程外でした.それがなんとわずか 4 年後の 2007 年,ハビタブルゾーンの地球型惑星が発見されています.著者らのチームも今年,ホットジュピターに進化しつつある惑星を発見しています.こんなに早く見つかるとは….わずか 4 年でここまで劇的に状況が変化してしまう分野なんてそうそうありません.惑星科学界はまさに空前の発見ラッシュといえるでしょう.こんなエキサイティングな時代に生まれ,世紀の大発見に立ち会えることを幸運に思います.

参考: