「天使は結果オーライ」
今日のエントリは野尻先生のインタビューもあったことですし,ロケットガール 2 作目を紹介したいと思います.
天使は結果オーライ―ロケットガール〈2〉 (富士見ファンタジア文庫)
- 作者: 野尻抱介,むっちりむうにぃ
- 出版社/メーカー: 富士見書房
- 発売日: 2006/11
- メディア: 文庫
- 購入: 2人 クリック: 10回
- この商品を含むブログ (58件) を見る
以下,ネタバレ含みます.
今回は「茜!」「宇宙研!」「探査機!」これですね(笑).
ゆかり,マツリと対照的な優等生タイプの新キャラ,三浦茜が登場したことで,ロケットガールの物語世界が完成しましたね.自分がヲタなせいか,この手のヲタキャラには弱いです.神運用を自分の頭で考え付いて実行するタイプだし.話のほうも前作でお膳立てが整ったので,もう冒頭から主人公達が当たり前のように軌道上にいます.素晴らしい世界です.
宇宙研が当然のように出てくるのもまた野尻作品らしくて良いですね(まだ「宇宙科学研究所」の時代ですが).以前にもご紹介しましたが,茜と金魚を乗せたヘリが不時着した地点が,ISAS メールマガジンで紹介されています(笑).
そして探査機.本書後半は NASA 冥王星探査機オルフェウスの救出ミッションです.現実に今飛んでいる冥王星探査機 New Horizons は普通に地上からの打上げでしたが,オルフェウスはかつてのマゼランやガリレオ,ユリシーズと同じくスペースシャトルからの投入で,これだけでもかなりwktkです.しかしそのオルフェウスが危機に瀕し,それをとんでもない方法で救出するロケットガールたち.神運用キタコレ.でももし実際に同様のトラブルが起こったとしたら,ヒューストンはこんな無茶な救出ミッションを許可しないでしょうねえ.大事なスペースシャトルと乗組員の無事の確保,また SSA の飛行士の人命と健康を考慮したら,オルフェウスを失うことを選択するのではと思います.
しかしそれだと,このオルフェウスのプロマネはさぞかし悲しむだろうなあ.プロマネと茜の交信シーンにはやはりじーんと来ますね.数十年かけて開発し,そしてさらに何年もの歳月を経て目的地に到着する.それに生涯を捧げる研究者たちが世界中にいる.惑星探査とはこういうものだと読者もあらためて実感させられますが,茜もこの真摯な情熱に打たれたからこそ,こんな無茶なミッションを立案し実行したわけですよね.野尻さんの宇宙探査に対する思いを垣間見ることのできるエピソードです.
それにしても様々な試練が乗り越えられていくたび「すげー.しかしこんなにページが残っている…まだ何かあるのか?これ以上一体何が起こるというのか!?次は何だ!!」とこちらの気持ちを容赦なく加速させながら,どんどん試練の難易度と読者の興奮とが増していって最後に頂点を極めるというこの展開は,毎度ながら実に痛快で見事です.
あと,このシリーズでいつも疑問なのが,主人公達が英語ペラペラなのと宇宙酔いにまったくかからないこと(笑).ゆかりは勉強嫌いのわりにはロシアや NASA の宇宙飛行士たちとネイティブばりの会話を交わしているし,茜も過重力には滅法弱いのに無重力は全然平気.英会話がからきしダメで絶叫マシンの落下部分が大の苦手な管理人にはうらやましすぎる素質です.SSA の適性検査でこのあたりの項目もひっそりとチェックされてるのかな.