科学教材「科学フロンティア Vol.2 太陽系探査編」が素晴らしい

少し古い話で恐縮なのですが,日本科学技術振興財団が 2004 年に製作した科学教材「科学フロンティア Vol.2 太陽系探査編」がウェブで公開されているのを発見しました.

一通り拝見しましたが,実に素晴らしい教材だと思います.

はやぶさに関してはイトカワの理学的な話からサンプル採取テクニック,自律着陸,大気圏再突入など,インタラクティブな動画を駆使して噛み砕いて説明されているほか,のぞみに関しても軽量化や軌道計画の変更などの苦労話がわかりやすくまとめられています.他にも,PLANET-C などの将来計画や,ミッションフロー,探査技術,データ解析,各種サブシステムの開発などなど,一通り目を通せば日本の宇宙開発の全貌をかなり細かいところまで知ることができます.動画に関しても,M-V の燃焼試験,各種ミッション機器の試験,はやぶさ打上げ時のコントロールセンター内など,未公開動画やお宝動画が満載です.宇宙に興味を持ち始めたお子様やライトな宇宙ファンにはもちろん,マニアもかなり楽しめるのではないでしょうか.

インタビュー(静止画と文章)は,川口先生や國中先生,吉川先生,矢野先生などのはやぶさ関係者をはじめ,PLANET-C の中村先生や,M-V のカウントダウンを司る餅原さんなど,幅広い分野の人達が登場します.第一級の研究者,技術者の皆さんだけあって,どのインタビューも本当に面白いです.部屋の本棚などのスナップショットも印象深い.

川口先生の言葉から.

ずっと軌道計画、軌道修正をやってきて、「さきがけ」で日本初の惑星探査に携わって、「ひてん」で月周回宇宙船を回して……そういうミッションが続けられてきたこと自体、楽しい道を歩いているかなと思います。

「のぞみ」の打ち上げで不具合が起きたとき、なんとか救う方法はないかと考えて、たまたまうまく軌道修正できたことは、ずっと忘れられないと思いますね。まあ、これは「のぞみ」が目的を達成できていればもっと良かったんだけど。

後は、NASA との合同研究会の間に、我々がずっと考えてきた小惑星探査の計画を盗られたんですね。悔しくて、ハッタリで「うちはイオンエンジンでやる」と言ったのが、「はやぶさ」のプロジェクトになったんです(笑)。

國中先生の言葉から.

僕が勝手に言ってるんですが、「はやぶさ」は自分が作ったラジコンを、7500万km先に置いてあるようなものですよね。こっちからコマンドを打って、好きなように動かして、どうやって動いたのかが見えるんですから。

そんなことほかの人にはできないわけですよね。むちゃくちゃ楽しいですよ。