吉田武さんのはやぶさ本について
昨年 11 月末に出版された吉田武さんの「はやぶさ」.ネット界隈を見ていると「感動した!涙が出た!」という意見と「知ってる話ばかり.はやぶさの話題が少ない.ウェブの丸写し.ただの便乗本」という意見に二分しているように思います.
- 作者: 吉田武
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2006/11/01
- メディア: 新書
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確かに,自分が読んだ感じでは目新しい情報はありませんでした.あとかなり宇宙研礼讃なのにちょっと引きました.自分は宇宙研のファンですが,あれでは NASDA に対してちょっと失礼じゃないかと.
でも,ただの便乗本だとは思いません.はやぶさのことをあまり知らないけど興味を持った,という層に対して,この本はとてもよい入門書になるはずです(「感動した!」派はこの層かな?).はやぶさって何?という知人がいたら,とりあえずこの本を渡しておけばよいのです.初心者がはやぶさの概略をつかめる現時点で唯一の情報源でしょう.
それにもうひとつ.1 次情報をここまできちんと網羅し,まとめているというのは大変すごいことです.同じくはやぶさの 1 次情報をまとめて何とか付加価値を生み出してやろうとしている人間からみると,とてもよくわかるんですよ.そもそも JAXA のはやぶさ関連ページがあちこちわかれていてなかなか情報がつかめないという状況があるわけですが,その錯綜した情報をきちんと整理している.年表の部分など,個人的には大変役に立っています.そういうわけで,自分はこの本に資料としての価値を見出しています.
裏話的な内容は松浦さんが書かれるだろうということで,バッティングしないようにまとめ的な本にしたのでしょう.その方針は正しかったと思います.ちょっと宇宙研マンセー過ぎではありますが,これを読んで興味をもった読者は松浦さんの本も読んで宇宙研の光と影を知るでしょうから,取っ掛かりとしては良い本じゃないでしょうか.