「アポロとソユーズ」とレオーノフの絵画集

ジェミニ 8 号のランデブー,アポロ 9 号の月周回,そしてアポロ 15 号では船長として月面に降り立ったデイヴィッド・スコットと,人類初の宇宙遊泳を成功させたアレクセイ・レオーノフという,宇宙開発史に名だたる 2 名の宇宙飛行士による回想録.
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以下,ネタバレ含みます.


宇宙開発に詳しい知人から紹介されて読み始めました.Amazon では品切れですが,他のネット書店やリアル書店にはけっこうあります.2 人の回想録が互い違いに描かれ,最初はやや落ち着かない感もありますが,次第にその演出が米ソの抜きつ抜かれつの熾烈な開発競争とダブり,緊迫感をあおります.激しいデッドヒートの末についに勝利をおさめたアポロミッションの回想も鮮烈ですが,アポロ・ソユーズドッキングミッションでついに 2 人は一緒に仕事をすることになり,お互いの交流のエピソードがまた良いですね.数年前まであれだけ火花を散らしていた 2 国の宇宙機関があっさりと手を結び,互いの優れた技術を生かしながら心の交流を深めていくくだりは,大国としての余裕なのでしょうか?いろいろ言われているアポロ・ソユーズミッションですが,歴史的には大変意義のある企画だったのではないかと思います.

また,特に旧ソ連の訓練や開発計画がここまで詳細に書かれた本は珍しく,資料としても価値は高いと思われます.ロシアの宇宙開発が好きな管理人としては,なかなかおいしい本でした.


ところで,本書の口絵に,宇宙のイラストを楽しそうに描くレオーノフの写真と,そのイラストがいくつか載っていました.本書によるとレオーノフは学生時代に画家を志して美術学校を目指しましたが,金銭的な問題であきらめたとのことです.しかし現在,レオーノフは芸術家としても活躍しているとのことで,ある意味夢をかなえたといってよいでしょう.

レオーノフの絵の特徴は,色の再現性に徹底的にこだわっているということです.

レオーノフ氏によると、彼は宇宙の「色・光・サイズ」を正確に絵で表現することにこだわり、飛行後に学術プログラムを作成したと言う。「宇宙を描いた景色の学術的な信頼性は75%でした。」そしてこの信頼性をあげるべく特別な方法を研究した。描く前には色調を「アナモロスコープ」という測定器を使って分析。古典的な色彩のスペクトルも同時に使用。絵の具はオランダのガッシュ(不透明絵具)。何層にも重ねて、黒くて深い空を表現。また、描いている場所の緯度・軽度も科学的な手法によって計測することにした。

レオーノフは宇宙の絵を描くとき、肉眼による観察にのみ頼るのではなく、測量機器による精密さを加味する。

しかし実はかれは、絵を画く前に必ずその星座の宇宙における正確な位置を調べあげているのである。

これを読んで,それほどまでに色の再現にこだわったレオーノフが描いた絵をぜひとももっと見てみたくなりました.上記の三菱電機 DSPACE のサイトには宇宙遊泳,ソユーズ・アポロ共同飛行中のスケッチ,ソユーズ・アポロドッキングシーンの 3 枚があり,特に 2 枚目は非常に貴重ですが,ネット上を探してみると,ありましたありました.大量に見つかりました.以下に列挙します.

まずはこのサイト.多分ここが一番詳しいかも.かなりの解像度で鑑賞でき,解説もついています.写実的な絵から昔の SF の挿絵のような空想的なものまで,多彩です.画家のソコロフとの合作もいくつかあります.(注:タイトルは正式でない可能性があります)

他にもあります.

以下は書籍です.日本ではほとんど手に入りません.

以上,ミニ・レオーノフ展でした.