JAXA タウンミーティング in 座間の開催報告

はやぶさ C エンジン点火第 1 報や予算に関する話題も出た JAXA タウンミーティング in 座間の公式な開催報告が出ました.

参加者は 50 名,その大半が 60 才以上という偏りがやや気になります.まあ,どこの省庁のタウンミーティングもそういうものなのかも知れませんが….質疑応答が面白いです.毎回,なんかちょっとずれちゃってる質問とかあったりするわけですが,JAXA 側の皆さんは慣れているのかさすがにうまく答えておられますね.

<「はやぶさ」の試料について>
参加者:「はやぶさ」についてです。私はターゲットマーカーに名前を載せていただいて、大変ロマンがあって、ちゃんと届くのかなと思っていたんですけれども無事に届いたようで、ありがとうございます。球を打ちつけてイトカワの石を吸い上げるということだったようですがどうもそれがうまくいかなくて、でもチリぐらいは入ったのかなということを聞いているのですが、そのへんはどうなんでしょうか。帰ってこないと分からないってことは分かるんですが。

川口:試料の件ですが、弾丸を発射することはたぶん、できなかったと思っています。1回目の着陸、表面に転がったときにチリが紛れ込んでることを期待していることはその通りです。どのぐらい入っている確率があるかというと、残念ながら、その確率はあまり高くないと思っています。ただ可能性は十分にあると思っていまして、1回目の着陸のときには、着陸したあとにふたを閉める、部屋の扉を閉めるということをしてますので、少し期待を持って、実は多くの期待を持って関係者は取り組んでおります。

参加者:太陽を中心にしてわれわれの地球などが公転していますよね。六十数年生きてきてずっと不思議に思っているのは、私から見ると、あるいは本を見ると、必ず左回りというんでしょうか。

志村ー,裏!裏!w

<「イトカワ」の揺動現象について>
参加者:「イトカワ」が揺さぶられてきたということですが、いつ、どういう形で誰が揺さぶったのか。これを聞きたいんですが。

川口:小惑星の「イトカワ」にもう少し小さな隕石がぶつかるんです。そうすると「イトカワ」全体がビリビリと振動するわけです。ぶつかるものには小さいものから大きいものもあります。「イトカワ」に行って何が分かったかといいますと、表面がすりガラスのようにくすんでいることが分かったんです。くすんでいるというのは、非常に小さな、微小な隕石というか、マイクロメテロライトと呼んでるわけですけど、それが表面にぶつかってくる。そうして、すりガラス状にどんどん変わってくるわけです。そうすると、地上から望遠鏡で見てると、くすんだ色、すりガラスになった色を見ている。ある人はそれを日焼けだといいますけど。非常に細かい粒のものが衝突してきているんです。細かいものはたくさん降ってくる。もう少し大きなものはときどき降ってくる。そしてそれがぶつかってきて振動するということです。地球にも同じようにたくさんの星のかけら、マイクロメテロライトもそうですが、いろいろなかけらが降ってきています。10年ほど前にスペースシャトルがLDEFという、ロング・ドュレーション・イクスポージャー・ファシリティーの略ですが、長期のほったらかし衛星というのを打ち上げたんです。何も積んでないんです。何も積んでなくて、ほったらかしにして、ある一定期間軌道に回した後、それをスペースシャトルに回収してきて地上で見たんです。何が分かるかというと、いかにたくさんのチリがぶつかってきているかということが分かるんです。表面にぶつかったチリが回収されるわけです。地球全体でどのぐらいの量になるかというと、一晩に10トン。水だったり氷だったり、鉱物の石のかけらだったりします。あるものは流星として見えますが、あるものは、ほんとに微小なものはそのまま地球の中に入ってきます。だって、地球ができたときの海の水はほうき星から来たかもしれないわけですよね。でも、1日10トンといってもそんなに簡単に太らないんです。そのぐらいの量の星くずというのは常に、「イトカワ」もそうですが、ほかの天体も常に降り注いているということなんですね。直径が20メートルぐらいの隕石だと100年にいっぺん落ちてきます。20メートルぐらいのものが落ちてくると、マグニチュード4くらいの地震が起きます。海に落ちると大津波が起きます。脅かすわけではありませんが、関東大震災クラスの地震が70年に一遍起きるということをみんな真剣に考えている。だけど100年に一遍、20メートルぐらいの隕石が落ちてきたら、どこか市街地に落ちたら壊滅しますよね。20世紀最初に、シベリアのツングースというところで大きな爆発があって、何十キロという範囲の森林が一方向、同心円状に全部倒れてしまった現象があるんですが、それは小さな彗星、氷の塊が落ちてきて、空中で爆発したといってるんですね。そういった大事件が起きるんです。それが起きる発生確率は100年に一遍。だから、もう20年ぐらいたつと起きるかもしれないんですが。ちょっと余談になりましたが、そういう頻度でいろいろな天体にけっこう近寄ってくるんですね。天体同士の衝突なんてありそうもない話で、人間が生きている間は起きないことだと思っているかもしれませんが、地球でもそのぐらいのことは起きています。木星に対して彗星が衝突したというものすごい事件がありました。10年ぐらい前の話ですけど。あれはたぶん、われわれにとってとても幸運だったと思います。ああいう天体同士が衝突するということが、一人の人間が生きている間に起きるということは大変なことだと思います。ですから、「イトカワ」を揺すっているということはけっしてまれなことではなくて、日常的に、大きさ次第ですけれども、常に揺すられているということの証拠でもあるということです。

サイエンスのほうの話題もここまで詳しく説明できるのはさすがプロマネだなあ.

<「はやぶさ2」と「はやぶさマークII」について>
参加者:「はやぶさ」のとき、テレビとかで逐次情報が出ていて非常に楽しませていただきましたので、今後もこういう機会がありましたらぜひ、テレビとか一般の人が目にできる場所で公表していただけたらなと思います。質問なんですが、先ほど「はやぶさ2」と「はやぶさマークII」が出てきましたが、それについて教えていただけたらと思います。

川口:報道のほうは私が直接携わったのですが、当事者は楽しんではいなかったんですけど。「はやぶさ2」は「はやぶさ」の姉妹機で作ろうとしています。なぜ姉妹機で、新しく作らないのかとご質問受けるかもしれませんが、アポロ時代だったらそんなにかからなくて、たぶん 1年でできるかもしれませんが、今の作り方、予算のかけ方ですと、新たに開発して作ると6、7年はかかるんですね。したがって、非常に短期間に「2」を打ち上げようとすると、すでに設計や開発が終わっているものを最大限活用するということになるので、これは見た目もかなりそっくりですけれども、「はやぶさ」と同じ設計を使っていくというのが「はやぶさ2」です。ただ「はやぶさ」と同じような天体に行ってもしょうがないんですね。小惑星は、実は番号で軌道が確定しているものだけでたぶん、いま10万個になってるんですね。そうすると、10万個を探査しなければいけないんですかという質問を受けるんですが、そうではないんです。小惑星は地上から観測できるスペクトルが分類されていて、大まかに分類すると4種類ぐらい。少し細かく分類すると8種類から10数種類に分けられますが。少なくとも代表の4種類にいけば、かなりの科学的な観測や分析ができるはずだと。「イトカワ」は、S型というんですけども、石ですね。シリケートのSなんです。「はやぶさ2」ではC型、カーボネーシャスというんですけど、炭素質、有機物を含む小惑星で、非常に多い小惑星なんですけど、そこからのサンプル帰還を考えています。多く小惑星は、SとCをたどると理解できます。「はやぶさ2」の意義はそこにあるんです。「はやぶさマーク II」は、マークIIという名前で分かるように、「はやぶさ」の姉妹機ではありませんで、まったく違う大型機をつくろうということです。これは国際協力でヨーロッパと一緒に協議をしています。一国でつくる規模ではないと考えています。H-IIAでいえば1つ丸々使い切るようなもので、今考えている中にはいくつかありますが、ほうき星からのサンプル帰還です。ほうき星は、さっき土星のところで生命があるかもしれないと申し上げました。だけど土星のところに生じている生命はどこから来たのかと、また違う問題が出てきますよね。どこまでいっても尽きないわけですけれども、ひょっとすると太陽系外かもしれませんね。土星のところで発見される生命がひょっとして人間と同じような遺伝子構造をある部分で持っていたりすると、これは大変なことです。ほうき星というのは太陽系の外です。そこから来たとしたら、また生命の根源をたどることになる。そういう観測をするためには、ほうき星、あるいはほうき星の尾を引かなくなった核の残りから試料を回収してきたい。そうすると、そういう手がかりが得られるだろうということを考えています。ですから今いわれているターゲットは、CAT天体とここに書いてありますけど、ほうき星の変性を遂げたあとの天体というんですけど、そういう天体のサンプルを考えています。できたとしても、おそらく2010年代の末ですね。

「当事者は楽しんではいなかったんですけど。」…ははは.お疲れ様です.
「一国でつくる規模ではない」…これはすごい.SELENE シリーズや PLANET-C を遥かに凌ぐ規模になるのでしょうか?

<国民が宇宙開発をサポートする方策について>
参加者:先ほどからお話の中で、「はやぶさ2」にしても予算がどうなるかとか、その前の飛行機の話でも同じように予算が、という話がありました。それから、去年「はやぶさ」の基礎調査をするお金もないからどうのという噂も聞きました。われわれとしては宇宙にもっとお金をかけるべきだと思っているんですけど、そのときには総務省にメールしたんですけど、われわれはどのような方法を取るのが一番効果的なんでしょうか。何か効果的に、宇宙関係の応援できる方法はないものでしょうか。

川口:われわれは、予算獲得にいろいろな手立てを一生懸命にやっておますが、議論になるのはいくつかあります。すなわちそれは、国民から見て賛同できているような雰囲気になっていますかという議論ですね。もう1つは、将来どんなふうに生かされるんですか。さっき、宇宙開発はそんなにすぐに役に立つのと似たような話がありましたが、役に立っているんですと。それは予測ができないものをやろうとしているので、過去のデータを使って説明しています。少しぐらいずれていても役に立つよ、賛同しているよ、期待しているよという皆さんの意見がどこかに入るとありがたいです。一緒に知恵を出していただきたいと思います。

坂田:(中略)われわれは3倍は欲しいと言ってます。

ああー,本当に 3 倍あれば,筑波も調布も相模原もずいぶん楽になるでしょうねえ.「国民から見て賛同できているような雰囲気になっていますか」というのは我々在野のファンの力の発揮しどころですね.はやぶさミッションがいかに国民の大きな賛同を得ているか,ということがはっきりわかるような,そういう支援活動をファンとしてもやっていきたいと思っています.