歌島さんのブログから

なぜかとても印象に残るエントリでした.本当に優秀な人は誰しもこのような瞬間があるのでしょうか? 軌道工学の厳しさもあらためて感じます.

学位論文の最後の詰をしていた1999年秋。どうしても巧く行かず、学位取得を諦めた。指導して頂いていた宇宙研の川口教授にメールして、問題を解決できなかった事をお詫びした。学位論文のテーマにしようとしていた或る軌道の不安定現象は、1992年に見つけていた。この問題をいつも考えていた訳ではないが、7年間、ずっと頭の片隅にあった。川口教授にメールを出す事で、肩の荷が下りた気がした。目的は達成できなかったが、取り敢えず重圧からは解放されると。メールを出した当日か翌日かは覚えていないが、それまで不安定と思い込んでいた条件で、PC に軌道計算をさせた。何も目的は無かった。不安定なためにどこかに飛んで行くと思っていたが、何と安定な軌道であった。この計算がきっかけとなって、この不安定現象の解明が出来、学位を頂けた。あの時、学位を諦めるメールを送っていなければ、その不安定現象を解明できたかどうか。