宇宙開発を応援するということ

書評では他の追随を許さないアルファブロガー dankogai さんが,「ローバー、火星を駆ける」という本の書評を書かれています(この本そのものは先日ぱらぱらと立ち読みしましたが,非常に面白そうな本です.今度買うつもり).

いろいろ考えさせられました.全面的に同意です.

その「世界で最も恵まれた」はずの彼らの苦労ぶりは、国を問わず共感できるものである。迷信とは無縁の科学者集団であるはずの彼らも、打ち上げにあたってはゲンを担ぎ、制御コマンドにINIT_CRIPPLEDとかSHUTDOWN_DAMNITと名付け、そしてスピリットとオポテュニティの姉妹には機械を超えた愛情を注がずにはいられない。彼らはその意味で、実に普通の人々なのだ、その普通の人々に普通ではありえない力を出させる力が、火星探査にはあるのだ。

これだけでも、火星探査を続ける理由としては充分ではないのだろうか。

だから大事なのは、それがスポーツなみかそれ以上に楽しいということを示すことだと思う。

宇宙開発が人智の限りを尽くさねば成功がおぼつかないほど難しく、にも関わらず理論の限りを尽くしても「なぜそうするか」を説明できない以上、その楽しさを伝える広報もまた宇宙開発そのものと同じぐらい重要に思える。宇宙開発にたずさわる人々もこの点には気がついているようで、ここ10年で各国の宇宙開発期間のWebサイトはみちがえるようによくなった。しかし、まだまだプロスポーツの世界には追いついていないように見える。例えばJAXAのページでは、打ち上げはストリーム中継しても、地味だがファンには垂涎の一般広報はPDFのままだ。ああわかってねえ。

それでも、本書のような本が外国語でなく自国語で読めて、自前のロケットを持っているこの国のポジションは悪くない。確かにNASAJAXAの間には、 MLBプロ野球以上の差があるし、NASA以前にESAと比べても少し見劣りするけれども、「地元チーム」として応援するに足りるだけの実力と業績はあるのだ。

宇宙開発を応援するのに、知識はいらない(もちろんあればあるほど楽しめる)。そして多分、理屈も。