「私と月につきあって」

かぐや月間ということで,月シリーズ第 4 弾,ロケットガール 3 作目です.
神運用オンパレードw

私と月につきあって―ロケットガール〈3〉 (富士見ファンタジア文庫)

私と月につきあって―ロケットガール〈3〉 (富士見ファンタジア文庫)

以下,ネタバレ含みます.


今回はフランスのロケットガール達と一緒についに月着陸です.1,2 作目で舞台設定とキャラ設定が完了していよいよ真骨頂といった趣の本書ですが,もう冒頭からトップギアで飛ばしまくりです.エアバスを無理矢理操縦して着陸するわ,クルーが突然リタイアするわ,LEO でクルーが骨折するわ….普通だったらこの辺でミッションをあきらめるものですが,なんとかしてしまうのがロケットガール.今回もあらゆる技を駆使してついに月に降り立ちます.以降の展開は正直神がかってますね.一瞬の邂逅に交わされた光のモールス信号や地球が可視になった瞬間も感動的ですが,圧巻はやはり月からの脱出劇でしょう.宇宙工学的にも極めてエレガントな手法を使いつつ,絵的にも大変スリリングなシーンを,ドラマ性もバッチリフォローしつつ描ききる力量には脱帽です.最後まで興奮要素てんこ盛り.月の山すれすれを生身でマッハ 4 で疾走なんて,ハリウッド映画だって考え付きやしません.

まるで奇跡に奇跡を重ねるようなミッションですが,よくよく考えてみると,無人の衛星や探査機はしょっちゅう,蚊の目玉を射抜くような運用をこなしているわけですよね.意外とイケるものかも知れません.まあ人間という要素が入るとミッションの精密さは何桁か落ちますが,代わりにロバスト性がアップしますので,無人とは別の意味で「何とかなる」ものかも知れませんね.

ちょうどかぐや LOI 中ということで,主人公達が見つめる遠ざかる地球や,月周回軌道の瞬間視界に飛び込んでくる月の平原などのシーンが,やけに臨場感を持って迫ってきます.かぐやも今こんな光景を見ているのかと思うとワクワクしますね!