「Space Race 宇宙へ 〜冷戦と二人の天才〜」

スプートニク 50 周年を記念してこの DVD を紹介したいと思います.

以下,ネタバレ含みます.


フォン・ブラウンコロリョフという 2 人の天才と,米ソの宇宙開発競争を忠実に再現したドキュメンタリードラマ.BBC 製作で昨年 NHK でも放映され好評を博しました(はやぶさスレでも高評価でした).再現ドラマといっても,世界まる見えみたいなやつじゃないですよ(笑).セットといい動員人数といい,ちょっとした映画並みの規模です.脚本も練られており,ドラマとしても十分なクオリティです.フォン・ブラウン役とコロリョフ役の役者さんもかなり本人の雰囲気出てますねえ.

製作にはロシア,アメリカ,ドイツという当事者国の放送局も参加しているだけに偏見や誤解は極力排されていると思われ,再現性と公平性は保証できます.歴史的映像もふんだんに盛り込まれており,特にロシアの珍しい映像は大変貴重です(記録映像と再現映像の区別がつかないのが難点ですがw).一番驚いたのが,アポロ着陸船の背後を飛ぶソ連の探査機がたまたま捉えられた映像.多分実際の映像だと思いますが….日本語訳は JAXA の渡辺勝巳さんが監修されてます(長年 NASDA の広報に尽力され,統合後は的川先生と一緒に宇宙教育センターを設立された方ですね).

宇宙開発の「負の歴史」や数々の失敗をきちんと描いているのは特筆に値します.宇宙開発の原動力となった軍事的要請,非人道的な体制,度重なる爆発事故,犠牲者の凄惨な姿,組織の腐敗,渦巻く私怨,世間の揶揄….重苦しいですね.正直,宇宙の話題に馴染みが薄い人が見たら,宇宙開発にマイナスイメージを持ってしまうかも知れない,ある意味で諸刃の剣です.しかしきれいごとでない真の宇宙開発の歴史がここに描かれているのです.そして,時代に翻弄されながらも想像を絶する艱難を耐え忍んで 2 人の天才が夢見た,月面着陸や地球の出のシーン.クライマックスでのこれらの映像の雄弁さは圧倒的です.それまでの「負の歴史」が報われたと感じる,そんな瞬間です(ソ連側としては全然報われてないと言われそうですが,人類全体としてはそう言えるんじゃないかと).

ちなみに管理人は DVD は持っていないのですが,Amazon のレビューによると,日本語吹替のみ,字幕なし,モノラル音声,だそうです.作品のクオリティは高いのに,この点は非常に残念ですね.あと,英語版 Wikipedia に,主にソ連側の描写について間違いが指摘されていますので参考にどうぞ.