宇宙開発委員会議事録が大量にうpされる

大量に出てます.まだちゃんと読んでませんが,きく 8 号の不具合について結構詳しい話など出ています.

なんか平成 18 年度のところにも知らない間に新しいのが上がってました.結構面白いです.

【澤岡特別委員】 1979年に日本が初めての宇宙飛行士を誕生させて、宇宙実験を行う計画の検討が関係機関で開始された時、当時私は東京工業大学助教授であった。その頃から、宇宙を使った新しい材料開発の仕事にすっかりほれ込んで、だんだん深みに入り込んでしまった。そのうちにISS計画が登場した。
 宇宙実験のユーザーの立場から、強力なネットワークをつくるべきと考え、同士を募り、日本マイクログラビティ応用学会という学会を作り、数百人規模であるが、現在でも活発な活動を続けている。ただ、スペースシャトルの遅延等によって、ISS計画が遅れるたびに、学会の中の雰囲気が非常に暗くなり、特に博士論文をそれで書こうとしている研究者がためらうことが多く、非常に不安定な時期を繰り返している。
 本当に、数年後に日本実験棟「きぼう」が上がって運用が始まるかどうかも過去の経験からすると半信半疑の気持ちが強く、だまされたと思って一緒に行こうという声をかけてきた。時々会うたびに、おまえにだまされた、ということを言われることがある。このまま終わってしまうとなると、本当に私の人生は何だったのかという気持ちになってしまう。現在68歳であるが、70歳までにはけりをつけてほしいということが私の願いである。
 昨年、久しぶりにアーヘン工科大学へ行って、若い人向けにいろいろと講演をしてきたが、10年前であれば、日本がそういうことを積極的にやっているということを知っていてくれたが、今はドイツのスペースシャトル計画の責任者であった同大学のSahm教授も退官されていて、誰も日本のことを知らなかった。それから、シュトゥットガルトでも日本のISS計画の話をさせていただいたが、誰も知らなかった。
 これだけやってきているのに、日本の認知度はどうなっているのか。このISS計画がここまで来たのは、アメリカではなくて実は日本が引っ張ってきたのだという自負がある。そういう誇りと、また同時に責任もある日本を見直してもらういい機会でもあり、それを組織的に広報するべきであると考える。国内で ISSはプロの間ではだんだん認知度が高まっているが、一般の方は宇宙飛行士の活動しかほとんど知らない。
 そういう中で、全く違った切り口で、これだけの予算をかけているのだから、世界中に知っていただき、またアジアにも知っていただき、日本国内にも知っていただくという大きな新しい企画が今こそ必要なのではないかと思う。

【鶴田特別委員】 心配しているのは、例えば月・惑星探査といった場合に、例えば月の有人探査計画に主力を置いて国際協力を考えるのか、或いは火星探査を含めた世界の潮流の中で探査計画を考えるのか、といった、その辺がまだ見えていない。その辺は決着をつけなければいけないだろうと思う。

中須賀特別委員】 鶴田特別委員の御意見はこういうことではないかと私なりに解釈したのだが、要するに、鶴田特別委員はずっと旧・宇宙科学研究所にいらっしゃって、宇宙科学の研究者コミュニティが次に何をやるか、というのを決める過程をずっと経験されていて、そういう観点からいうと、科学者の中で徹底的な議論が行われ、限られた予算の中で次に何をやるかということを決めてきたという歴史があるわけである。
 それに対して、月・惑星探査ということになると、純粋科学だけではない他の要素も幾つかある中で決めていかなければならないということであり、それを議論する場はどこなのかと、こういう御質問ではないかと思う。

【立川理事長】 棚次特別委員から言っていただいたが、我々としてはH−2Aロケットを使ってある程度のペイロードが打ち上げられると考えている。その後をどうするかはこれから、その都度考えればいいと思っている。それはキックモーターでやる手もあると思う。
 同時に、我々としてはそうすることによって、相乗り衛星をもっと増やすこともしたいわけである。1回のH−2Aロケットの打上げで科学衛星と他の衛星を同時に打ち上げるためには、新しい第3段目を考えた方がいいと思っているから、これはM−5ロケットの知見を活用しようということで、第24号科学衛星(PLANET−C)もそういう方向で検討している。おそらく、それほど御心配いただかなくても大丈夫かという気がしている。

【鶴田特別委員】 さきほどの前半の話と関連して、4ページに「我が国の強みを活かし、未知のフロンティアである宇宙の探査に果敢かつ戦略的に挑戦する」という文章がある。これは大目標だと思うが、目的がはっきり書かれていないと思う。
 サイエンスが目的なのか、そうでなく他の目的なのかということがはっきりしない。むしろ、「未知のフロンティアである宇宙への人間活動の展開を目的とし」とか、つまり人間が直接行く、行かないは関係なく、人間活動を太陽系空間の中に展開していくということが目的だとして、そういう大きな流れが内在しているということが、いわゆる科学との切り分けになるのかなと思う。科学もその一つじゃないかと言われるかもしれないけれども、何かそういう目的をもうちょっと明確化することが必要かなという気がしている。

【松尾委員長】 難しいところである。

【青江部会長】 探査を有人で行うということをおっしゃったのか。

【鶴田特別委員】 そうではない。例えば火星までは人間が何とか行けるが、その先はもう生物学的に人間は行けない。したがって、無人のロボットが探査を行うわけだが、そういうことで太陽系の惑星に対する認識が非常に深まる。それは人間が行っているのと同じような意味合いを持つであろうと思う。だから、人間活動をそこまで広げていくという、その行動のスタートが月探査や火星探査だと思っている。

【松尾委員長】 人間活動でくくってしまうと、本当に人間が行く、行かないは別として、宇宙科学研究も全部それでくくれてしまわないか。

【鶴田特別委員】 宇宙科学研究の推進の方で、太陽系探査を、目的の中に入れているが、その中でいわゆる科学的目的とは別に、一般の社会を全部含めた意味での関心がフロンティアに向いているということであり、そこでいろいろなことを行うのは、必ずしも科学とは違う側面があるだろうと思う。

【青江部会長】 まさに観山特別委員の御指摘のとおりで、我々も事務局も、宇宙科学研究の範疇としての探査との関係について、具体的な活動としては、相当部分重ねっていると考えている。それを、わざわざ探査というもので柱を一つ立てるのは、先ほどおっしゃられたような意図もある。そこをどう表現するかというのはなかなか難しいところがあって、逆の言い方をすれば、そういったことがはっきりしていない段階で、「いよいよ月をめざす」というのは、そもそもおかしいだろうという御意見も出てくるだろうと思う。そこははっきりさせておくべき、重要なポイントである。

【鶴田特別委員】 ただ、これはなかなか切り分けが難しくて、道を誤らないような言葉をどう掲げていくかということだと思う。

【松尾委員長】 真剣に悩んでいる部分である。

【河野特別委員】 私はこの分け方が、非常にいいと思う。どういうことかというと、前から主張していたが、特に惑星の探査を、これは科学的側面からだけで表明されると、ある意味、困る面がある。日本が宇宙開発を進めていくとなると、どうしてもそういうところはやらなければいけないという面が非常に強い。だから、その意味では科学だけを言うのではなくて、ある種の探査を日本の基本的な宇宙政策の中で進めるということを分けて言う必要があると思う。
 だから、(3)の宇宙探査への挑戦というのは、科学の面だけでなく、他のいろいろなものを含んだものであり、鶴田特別委員がおっしゃったような意味のことはここに書かれていると思う。その上で、宇宙科学の推進の中でもロボットを利用して、太陽系探査科学に重点的に推進するというのは非常に自然であると思う。だから、私は今の分け方のままでいいのではないかという気がする。

【松尾委員長】 鶴田特別委員は、分け方がよくないと言ってのではなくて、宇宙探査の目的として、フロンティアの挑戦だけで目的になり得るのか、ということだと思う。