「パワーズ オブ テン―宇宙・人間・素粒子をめぐる大きさの旅」
科学映画史上の傑作「Powers of Ten」を書籍化したもの.
- 作者: フィリス・モリソン,フィリップ・モリソン,チャールズおよびレイ・イームズ事務所,村上陽一郎,村上公子
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 1983/10/30
- メディア: 単行本
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以下,ネタバレ含みます.
イームズといえば,建築やデザインの分野では非常に有名ですが(イームズチェアなどは今でも任期ですね),実は科学映画史に残る短編映画「Powers Of Ten」を作ったことでも知られています.本書はそれを書籍化したものです.
本書を読む前に,まずはオリジナルとなった短編映画をごらんになることを強くお勧めします.(たとえば以下の DVD に収録されています.YouTube などでは上げては消されの繰り返しみたいですね.モノクロの別テイクなどもあるようですが,やはりカラー版がおすすめです)
EAMES FILMS:チャールズ&レイ・イームズの映像世界 [DVD]
- 出版社/メーカー: パイオニアLDC
- 発売日: 2001/08/24
- メディア: DVD
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映画のほうがスケール軸を縦方向に旅しているのに対し,本書は各スケールにおける横方向への志向性を持っています.すなわち,見開きページで構成されるそれぞれのスケールにおいて,右ページは映画からキャプチャされた美しい画像,左ページはそのスケールにおける代表的な事物や現象を,宇宙物理学から分子生物学まであらゆる科学的知識を総動員しつつ,きわめてビジュアルなかたちで列挙しています.最新の知見に負けず劣らず,科学史上のさまざまな史料もあわせて載っているのは特筆すべきことです.あるスケールの世界に対する人類の認識が,科学の発展のともにどのように変遷していったのかがよくわかります.もちろん今もその変遷は進行中であり,1982 年初版の本書には記述が古くなっている部分もあるにはあります.しかし 10 のべき乗を旅するというその卓越したコンセプトは古くなることはありません.
映画と違って,好きなページを開きそのスケールの世界を堪能するといった楽しみ方ができるのはいいですね.さすがデザイン事務所,たくさんの美しい図版を眺めているだけで飽きません.手元に置いておくと人生が豊かになりそうな一冊.