NASA の小惑星探査計画 OSIRIS が落選,月探査計画 GRAIL が選ばれる

はやぶさ2の対抗馬として NASA が計画している小惑星探査計画 OSIRIS ですが,このたび行われた Discovery プログラムの次期探査ミッション選定に落選したとのことです.選ばれたのは,月の重力分布を調べる衛星 GRAIL です(直接タレコミも頂きました.ありがとうございます.記事にするのが遅くてすいません).

上記のプレスリリースには,OSIRIS が落選したことは直接書いてありませんが,例えば以下の記事などが落選のニュースを伝えています.

「正直,ちょっとショックでした」OSIRIS の主任研究員 Michael Drake 氏は語った.
研究所は NASA 上層部からのフィードバックに基づいて提案書を修正し,小惑星サンプルリターンミッションの予算の要求を続けるつもりでいる.
("It was a bit of a shock, frankly," said Michael Drake, director of the UA's Lunar and Planetary Laboratory and principal investigator for OSIRIS.
The lab will continue to seek funding for the asteroid-sample-return mission, modifying the proposal based on feedback from NASA officials. )

いやー,管理人も正直びっくりしました.

「これまでの努力を無駄にするつもりはありません」と Drake 氏.「ワシントンで公式デブリーフィングを行い,何が気に入られ何が気に入られなかったのかを把握したうえで次に進みたい」
("The intent is not to waste all the effort we've made," Drake said. "We'll get an official debriefing in Washington and find out what they liked and didn't like and move on." )

これで,OSIRIS が 2011 年に打ち上げられる見通しはきわめて低くなりました.しかし,既に概念検討として NASA から 120 万ドルの予算がついていますし,再出馬する気まんまんのようなので,楽観視はできません.はやぶさ2も予算が十分に付かず開発が遅れているので,状況としては五分五分といったところでしょうか.

それにしても NASA 上層部も,小惑星探査よりも月の利用調査を優先したということですね.ある意味,日本と同じ構図です.上記の記事によると,GRAIL は「科学的価値の高さと技術的・プログラム的リスクの低さ」が決め手だったようですが,OSIRIS は相対的に野心的過ぎると判断されたようにも読めます.

GRAIL は月の重力分布を探査する周回衛星ということで「かぐや」との競合が気になりますが,主任科学者の Zuber 氏によると「かぐやの 100 倍感度が良い」とのこと.

100 倍というのは確かにすごいと思いますが,なんかこう,月面基地のためというのが見え見えで,手堅いけれども面白味にはやや欠ける気がします.そもそも重力分布調査といっても 4 億ドルもかけてやるべきものなのか….OSIRIS 落選には確かに安堵の気持ちが大きいですが,NASA の方針には少し驚いています.


追記:月探査情報ステーションにもう GRAIL のページができています.


追記(2008-01-09):Planetary Blog で Emily さんの「かぐやとどう違うの?」という疑問に,主任科学者の Zuber さんが答えています.やっぱり 2 桁精度が上がるんだそうです.すげえ.