「国産ロケットはなぜ墜ちるのか」

突然ですが今後,宇宙(宇宙開発,宇宙工学,惑星科学,天文学など)に関する書籍を紹介するエントリを時々書いていこうかと思います.なにしろ文才がないものですから,書評みたいな立派なものは書けません.せいぜい小学生の読書感想文のようなものが関の山でしょう.ただ,この一連のエントリは,感想を書くことよりむしろ,世の中にあるいろいろな良い本を皆様に紹介していくことに主眼を置きたいと考えています.

はやぶさタッチダウンに世間が沸いていた 2 年前,管理人は宇宙に関する知識が極めて貧弱だったためにはやぶさスレの高度な議論にまったくついていけず,せめてここに書かれていることを少しでも理解できるようになりたいと思い,宇宙関連の本を読み始めました(今も,勉強中です).そのなかで出会った,多くのすばらしい本を少しずつ紹介していきたいと思います.このブログを読んでくださっている方なら確実に読んでいるような本や,大きな図書館に行かないと入手できないような絶版本などもかなり含まれると思いますが,ご容赦ください.

というわけで,いきなりメジャーすぎる本ですみません.みんなもうとっくに読んでるんだろうなあ.管理人はつい最近読んだばかりなので.

国産ロケットはなぜ墜ちるのか

国産ロケットはなぜ墜ちるのか

出版は 2004 年 2 月.H2A 失敗,みどり機能喪失,のぞみ火星軌道投入断念と立て続けにトラブルが起こった,日本の宇宙開発史上類を見ない暗い時代.「日本の宇宙開発はもうダメだ」というムードが世間を支配していたあの時世に,ある意味非常にセンセーショナルなタイトルの本書は書店でもかなり目立っていました.

最近のロケットまつりなどでの松浦さんの NASDA 批判から,本書もそういう本かとずっと思っていたのですが,違いました.諸悪の根源は日本の官僚制度と政治であって,むしろ NASDA はそれらに翻弄された被害者であるといえます(多分,現在の松浦さんの NASDA 叩きも標的は上層部であって,NASDA の技術者は叩きの対象ではないように思う).

あの頃の絶望的な空気からすると,現在の日本の宇宙開発をめぐる状況はよくここまで持ち直したなあという気はします.しかし,本書で指摘されているような官僚・政治側の問題が本質的にまったく改善されていないことを思うと,根本的な部分が変わらない限り当時のような状況はいつでも再発しうるような気がします.今まで技術開発面に興味が集中していた管理人ですが,宇宙開発が政治や官僚制度・国際競争と無縁になりえない以上,このような問題も常に意識していかなければいけない,現実を知った上で夢を語らなくてはただの夢物語だ,と感じた次第です.