「星と生き物たちの宇宙―電波天文学/宇宙生物学の世界」
イラストとユーモアのセンスに関しては宇宙研でも稀有な才能を持っておられるお二人が,望遠鏡でもなかなか見えない宇宙の果ての星の世界から,顕微鏡でようやく見える極微の生き物たちの世界まで,イラスト満載の「メール対談」で縦横無尽に語りまくります.
星と生き物たちの宇宙―電波天文学/宇宙生物学の世界 (集英社新書)
- 作者: 平林久,黒谷明美
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2000/03
- メディア: 新書
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以下,ネタバレ含みます.
ISAS メールマガジンなどを読んでいると執筆者の方々が実に文才豊かなことに驚くのですが,その中でもひときわ温かみに溢れた文章を書かれているのが平林先生です.いっぽう黒谷先生は,遊び心いっぱいの宇宙学校ポスターで御馴染みですね.その 2 人の対談だから面白くないはずがありません.しかもメールでの対談という実に奇抜な試みです.
そもそものきっかけが,たまたま宇宙研のエレベータで乗り合わせたから.それまでお互いに話したこともほとんどなかったそうですが,それがまったく信じられないくらい息が合っています.片方が自分の研究の話を始めると,もう片方は生徒となってどんどん疑問をぶつける.話が乗ってくると,ふとしたはずみで役割が入れ替わり,今度はもう片方が自分のフィールドを生き生きと語り始める.超遠方の銀河中心のブラックホールから瞬時にカエルやゾウリムシに話が飛ぶこのダイナミズムがすばらしいです.生物学と天文学に意外な共通点を見つけたり,文化の違いを再認識したりしながら読み進めるうちに,いつの間にか細胞生物学の初歩も電波天文学の初歩も身についているという,知的興奮が十二分に味わえる一冊です.特に宇宙生物学という分野は,これからいよいよ面白くなってきそうな予感がありますね.
それにしても本当に二人とも博識ですよねえ.あちこちに引用される古典の一節といい,ちょっとしたイラストといい….すごく頭の良い友人と歓談したあとと同じような快い満足感が残ります.
この黄金コンビは本書以降も面白い本を次々と上梓されています.その紹介はまたの機会にしましょう.
- 作者: 黒谷明美
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2001/11/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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- 作者: 黒谷明美
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2004/05/22
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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平林先生の個人サイト.ここにも黒谷先生との共同制作が数多くあります.
こんなところでも共演.