オーストラリアはやぶさお迎えツアーに自粛の動き
はやぶさスレなどでは,はやぶさ帰還をオーストラリアで迎えたいという声が少なからずあり,実際にツアーのようなものを企画しようとする方々もおられました.
しかし,このたびのイオンエンジン復旧時の記者会見で,
毎日 帰還日は決まっているのか。
川口 今のところ言わないことになっている。勘弁してください。旅行する人が大変になったりするので…
はやぶさリンク:はやぶさ、帰還に向けてイオンエンジン再起動: 松浦晋也のL/D
というやり取りがあったことを受け,少なくともツアー計画を進めておられた「天燈茶房 TENDANCAFE」の mitsuto1976 さん,「人生ご縁となりゆきで」のすばるさん,「文系宇宙工学研究所」の金木犀さんは,JAXA 側に迷惑がかからないようにとツアーを自粛することにしたとのことです.
- そこへ行かずとも、我らの想いは届く… ~HAYABUSA The Voyage Home~ - 天燈茶房 TENDANCAFE
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……確かに自分が宇宙研関係者だったら「来るな。お願いですから来ないで下さい」と言う。わかっちゃいたんだ。
カプセル再突入の瞬間を見届けたいという気持ちは,はやぶさファンの多くに共通のものでしょう.それは管理人も全く同じです.しかし,川口プロマネご自身から「勘弁してください」という発言があったことは,やはり重く見るべきなのだろうと思います.宇宙研のために悩みながらも冷静に英断をくだしたお三方のご判断に,はやぶさまとめ管理人は敬意を表したいと思います.
はやぶさのことをよく理解しておられる野尻さん自ら指摘されているように,
「感動」を求めて集まってくるファンというのが、どうもクールさに欠けると思っています。
尻P(野尻抱介) on Twitter: ". @sikano_tu @teehah この脚本は事実であるだけに素晴らしいのだけど、「感動」を求めて集まってくるファンというのが、どうもクールさに欠けると思っています。"
はやぶさの熱狂的なファンは周りが見えなくなってしまうことがしばしばあります.管理人自身がまさにそうで,これまでも感動を煽り,自分も煽られてきたことは大きな反省点です.ツアーに関しては個人的には静観していましたが,そのような流れを生み出す一助になってしまったかも知れないことに関しては責任を感じています.だからこそ,このような動きが今後起きないように,はやぶさ帰還に関する本ブログでの扱いは慎重にしていきたいと思います.そしてこのことに気づかせてくださったお三方の議論に心から感謝申し上げます.
一方で,
今、国民目線からみて、何が本当に必要なのか。
それをきちんとプレゼン出来るロビイストと。
並行して、民意の認知を高めていくための広報活動と。今のJAXAには、何よりそれが必要だと思うのだ。
その一環として、例えば今回の「はやぶさ」の地球帰還等は、
優秀な広告代理店と組む等すれば、格好のイベントと化すことも
出来るのではないか?
という意見も出ています.これも,JAXA や日本の宇宙開発の将来を思うからこその意見で,前半に関してはまったく同意です.ただ,実際はコストパフォーマンスの問題,そしてこれはお三方も指摘されていますがインフラの不足と国際調整という問題があるのでしょう.帰還はオーストラリアの砂漠地帯,宿泊施設や交通機関も限られているのではないでしょうか.国内でさえ,今年夏の皆既日食では悪石島に観光客が殺到して混乱をきたしたことを考えると,外国の軍事施設では同じことは許されないでしょう.そして日食と違うのはぎりぎりのクリティカルフェーズであることで,乱暴を承知でたとえるならオリンピックの 100m 走で号砲直前に観客がトラックに踏み込むようなものであり,まさに野尻さんが憂慮する「クールさに欠ける」ファンの姿そのものであるということです (自戒).
広報活動の重要性は JAXA はわかってはいるはずで,限られた予算と人員のなかで出てきたのが例えば「あかつき」や IKAROS のキャンペーンであり,「きずな」クリスマスカード配信であり,JAXA 採用ブログであり,YouTube JAXA チャンネルであって,はやぶさに関しても,宇宙オタ数十人を相手にした豪州ツアーよりももっとコストパフォーマンスの良い広報活動が考えられるはずです.そこに期待したいところです.
あくまで一ファンとして,管理人はファンの渡航自粛に賛同し,今後の記事執筆でも慎重を期しつつできるだけ情報を伝えていけるよう,留意していきます.ファン心理を考えると非常に悩ましいものはありますが,はやぶさの確実な帰還のために,ご理解いただければ幸いです.
Wiki サイドバーのはやぶさ帰還カウントダウンクロックも 1.1 に上げたところでしたが,正確ではなく帰還日は未定であることを明記しておこうかなと思っています.
はやぶさタッチダウン 4 周年
はやぶさ,イオンエンジン復旧運用の最中に至近距離で火星を撮影
「今週のはやぶさ君」の 11/26 分が更新されましたが,なんとはやぶさは 11/12 にスタートラッカで火星を撮影していました.
11/4 にイオンエンジンが異常停止し,ニコイチ運用での推力を確認したのが 11/11 のこと.11/12 というと,希望の光が見えてきたが,それでもまだまだ予断を許さない状況だったのではないかと思います.そんな中の火星の撮影,しかも迅速な公開に感謝です.
また,2006 年 3 月通信復旧プレスリリースでは,
探査機搭載のイオンエンジンや3軸姿勢制御のためのスタートラッカ、姿勢軌道制御コンピュータなどは、探査機全体の電源が一旦落ちたため、非常に低温の状態におかれたと推定されており、その機能が保たれているか懸念されるところです。現時点では、これらの機器の動作は確認にいたっておりません。
とあったため,スタートラッカを心配していましたが,正常に動作しているようで何よりです.
はやぶさと火星の距離は 0.13AU.ざっと 1900 万 km です.火星半径は 3400 km ですから,さすがに点にしか見えませんね.ダイモスの軌道半径でさえ 23,400km です.しかし,それでも火星に日本の探査機が近づいたのは,のぞみが 2003 年にわずか 1,000km (火星直径のたった 1/7.例えば東京〜宗谷岬間は 1,100km) まで近づいて以来のことです.機器が正常に作動していれば,のぞみはその時火星表面を自動的に撮影してメモリに記録したはずですが,送信機が復旧しなかったためにのぞみがその画像を地球に送ってくることはありませんでした.その事実を思い起こすと,はやぶさの送ってきた火星の写真には特別な感慨を抱きます.
ちなみに火星のバックに写っているのはしし座ですね.SAT というのは土星のようです.
「今週のはやぶさ君」にはさらに,11/26 の第 2 回タッチダウンの時に使われたホワイトボードの写真も載っています.当時からそのまま保存されているようです.
LCROSS,月面に衝突.水の存在を確認
NASA の月面探査機 LCROSS が月面に衝突し,水の存在が確認されたそうです!
京都ではやぶさに関する市民シンポジウム開催
2 日間行われた宇宙研一般公開
今年の宇宙研一般公開は史上初,7 月 24〜25 日の 2 日間開催だったとのこと.
今年は「ミニミニ図鑑」というリーフレットが配られたようなのですが,なんと,その PDF がダウンロード可能! これで,参加できなかった方も安心ですね.
はやぶさ関係では,なんと運用の様子をリアルタイムで Web カメラ中継していたり,臼田のアンテナが捉えたはやぶさの電波を音声にしたものを流していたりしていたようです.
また,なんと組み立て中の PLANET-C (模型でなく宇宙に行く本物) も見ることができた模様.素晴らしい.
なお,一般公開レポまとめがすばるさんのところにあります.昔はやぶさまとめニュースでもやりましたが,結構大変なんですよねこれ(笑).お疲れ様です!
ちなみに,5 月からは土日の展示室公開も始まっているようです.一般公開が唯一の見学機会だった方々にも朗報ですね.
H-IIB,初打上げ成功,HTV も成功裏に
9/11 に H-IIA の初フライトで打ち上げられた HTV は完璧な飛行で ISS に到着し,11/2 早朝に大気圏に再突入しました.
- JAXA|H-IIBロケット試験機による宇宙ステーション補給機(HTV)技術実証機の打上げ結果について
- JAXA|宇宙ステーション補給機(HTV)技術実証機の国際宇宙ステーションとの結合完了について
- JAXA|宇宙ステーション補給機(HTV)技術実証機の再突入について
見事なミッションでした.ISS の下方に浮かぶ HTV を捕らえた写真は素晴らしいものでした.
- http://mainichi.jp/select/science/news/20091110ddm016040164000c.html
- (via HTV:日本の無人補給機、ミッション終了 想定以上の成果 [毎日] - 岩日誌)
「止まっているようにしか見えなかった」。9月18日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)筑波宇宙センターで、ISSのロボットアームがHTVをつかまえる「キャプチャー」作業を見守った米航空宇宙局(NASA)スタッフの言葉だ。
はやぶさやおりひめ・ひこぼし等で培われた自動ランデブ技術の華ですね.
2 号機は 2010 年度冬期を予定しているようです.成功を祈ります.
小型ソーラー電力セイル実証機 IKAROS もキャンペーンを準備中
あかつきと一緒に打ち上げられる小型ソーラー電力セイル実証機 IKAROS も,名前とメッセージを募集して搭載するキャンペーンを予定しているようです!近くキャンペーンサイトも立ち上がるとのこと.
膜の四隅の「先端マス」に取り付けられるとのこと.
小型ソーラー電力セイル実証機IKAROSへのネームプレートの搭載についても同様の提案を行うことができます。文字は27mm×27mm×0.2mmのアルミプレート210枚にエッチングなどで転記するものとし、PLANET-C同様に2010年2月に予定されている衛星への取り付けに間に合うように1 月末までにJAXA相模原キャンパスに納品してください。ネームプレートはIKAROSの4隅に取り付けられた先端マス(膜を引っ張るオモリ)に搭載します。
さらに米国惑星協会も 2010 年末にソーラーセイル Light Sail-1 を打上げ予定で,相互の応援キャンペーンとするそうです (JAXA のページには「2010 年度末」とありますが,米国惑星協会のページでは 2010 年末のようです).
米国惑星協会も Cosmos-1 の痛手を乗り越えてついに戻ってきたのですね.来年は 2 艘 の大きな帆船が宇宙に浮かぶ,ソーラーセイル元年となることでしょう.楽しみです.
なお,IKAROS は北海道での大気球による展開実験が天候不良のため今年も実施できないという不運に見舞われながらも,ついにフライトモデルの膜の巻きつけを完了したようです.おめでとうございます! 次にこの膜が開くのは,宇宙空間ですね.
PLANET-C,「あかつき」と命名,メッセージ募集キャンペーンも開始
来年度の打ち上げに向けていよいよ最終段階の金星探査機 PLANET-C が「あかつき」と命名されました!
これまでの宇宙研の伝統 (打ち上げ後に発表) や JAXA の最近の傾向 (公募) と違うので,あれっと思いましたが,やはり科学衛星はかかわった科学者自身が命名するのが望ましいのでしょう.
「あかつき」,良い名前ですね (ちなみに誰もが思いつく「みょうじょう」はすでに OREX で使われてます).薄明の空に輝く金星は管理人の好きな風景の一つです.
そして恒例のメッセージキャンペーン,今回もあります!
締切は 12/25,名前だけでも OK とのこと.丸の内の JAXAi では手書きでメッセージやイラストを記入できるようです.
あかつきの日々の試験の様子は,プロジェクトサイトで頻繁に報告されています.だんだん組みあがっていくところをみるとわくわくしますね.
公式マスコットキャラクター「あかつきくん」「きんせいちゃん」も決まりました.今はやりのゆるキャラ風ですが,きんせいちゃんは金星に手足が生え,顔の中がスーパーローテーションしていてなかなかシュールですww
追記 (2009-11-28):あかつきが報道陣に公開されたようです.
国内製造のセラミック製軌道制御用スラスタを初採用,とのこと.はやぶさやのぞみではトラブルメーカーだったスラスタですが (もっとも,はやぶさは軌道制御用の大型スラスタは積んでいませんが),少しでも国内コンポーネントが増えるのは喜ばしいニュースです.