2 日間行われた宇宙研一般公開

今年の宇宙研一般公開は史上初,7 月 24〜25 日の 2 日間開催だったとのこと.

今年は「ミニミニ図鑑」というリーフレットが配られたようなのですが,なんと,その PDF がダウンロード可能! これで,参加できなかった方も安心ですね.

はやぶさ関係では,なんと運用の様子をリアルタイムで Web カメラ中継していたり,臼田のアンテナが捉えたはやぶさの電波を音声にしたものを流していたりしていたようです.

また,なんと組み立て中の PLANET-C (模型でなく宇宙に行く本物) も見ることができた模様.素晴らしい.

なお,一般公開レポまとめがすばるさんのところにあります.昔はやぶさまとめニュースでもやりましたが,結構大変なんですよねこれ(笑).お疲れ様です!

ちなみに,5 月からは土日の展示室公開も始まっているようです.一般公開が唯一の見学機会だった方々にも朗報ですね.

H-IIB,初打上げ成功,HTV も成功裏に

9/11 に H-IIA の初フライトで打ち上げられた HTV は完璧な飛行で ISS に到着し,11/2 早朝に大気圏に再突入しました.

見事なミッションでした.ISS の下方に浮かぶ HTV を捕らえた写真は素晴らしいものでした.

「止まっているようにしか見えなかった」。9月18日、宇宙航空研究開発機構JAXA)筑波宇宙センターで、ISSのロボットアームがHTVをつかまえる「キャプチャー」作業を見守った米航空宇宙局(NASA)スタッフの言葉だ。

はやぶさやおりひめ・ひこぼし等で培われた自動ランデブ技術の華ですね.

2 号機は 2010 年度冬期を予定しているようです.成功を祈ります.

小型ソーラー電力セイル実証機 IKAROS もキャンペーンを準備中

あかつきと一緒に打ち上げられる小型ソーラー電力セイル実証機 IKAROS も,名前とメッセージを募集して搭載するキャンペーンを予定しているようです!近くキャンペーンサイトも立ち上がるとのこと.

膜の四隅の「先端マス」に取り付けられるとのこと.

小型ソーラー電力セイル実証機IKAROSへのネームプレートの搭載についても同様の提案を行うことができます。文字は27mm×27mm×0.2mmのアルミプレート210枚にエッチングなどで転記するものとし、PLANET-C同様に2010年2月に予定されている衛星への取り付けに間に合うように1 月末までにJAXA相模原キャンパスに納品してください。ネームプレートはIKAROSの4隅に取り付けられた先端マス(膜を引っ張るオモリ)に搭載します。

さらに米国惑星協会も 2010 年末にソーラーセイル Light Sail-1 を打上げ予定で,相互の応援キャンペーンとするそうです (JAXA のページには「2010 年度末」とありますが,米国惑星協会のページでは 2010 年末のようです).

米国惑星協会も Cosmos-1 の痛手を乗り越えてついに戻ってきたのですね.来年は 2 艘 の大きな帆船が宇宙に浮かぶ,ソーラーセイル元年となることでしょう.楽しみです.

なお,IKAROS は北海道での大気球による展開実験が天候不良のため今年も実施できないという不運に見舞われながらも,ついにフライトモデルの膜の巻きつけを完了したようです.おめでとうございます! 次にこの膜が開くのは,宇宙空間ですね.

PLANET-C,「あかつき」と命名,メッセージ募集キャンペーンも開始

来年度の打ち上げに向けていよいよ最終段階の金星探査機 PLANET-C が「あかつき」と命名されました!

これまでの宇宙研の伝統 (打ち上げ後に発表) や JAXA の最近の傾向 (公募) と違うので,あれっと思いましたが,やはり科学衛星はかかわった科学者自身が命名するのが望ましいのでしょう.

「あかつき」,良い名前ですね (ちなみに誰もが思いつく「みょうじょう」はすでに OREX で使われてます).薄明の空に輝く金星は管理人の好きな風景の一つです.

そして恒例のメッセージキャンペーン,今回もあります!

締切は 12/25,名前だけでも OK とのこと.丸の内の JAXAi では手書きでメッセージやイラストを記入できるようです.

あかつきの日々の試験の様子は,プロジェクトサイトで頻繁に報告されています.だんだん組みあがっていくところをみるとわくわくしますね.

公式マスコットキャラクター「あかつきくん」「きんせいちゃん」も決まりました.今はやりのゆるキャラ風ですが,きんせいちゃんは金星に手足が生え,顔の中がスーパーローテーションしていてなかなかシュールですww

追記 (2009-11-28):あかつきが報道陣に公開されたようです.

国内製造のセラミック製軌道制御用スラスタを初採用,とのこと.はやぶさやのぞみではトラブルメーカーだったスラスタですが (もっとも,はやぶさは軌道制御用の大型スラスタは積んでいませんが),少しでも国内コンポーネントが増えるのは喜ばしいニュースです.

かぐや月に還る

2007 年に打ち上げられた月周回探査機「かぐや」は,後期運用で高度をさらに落とし,高度 11km という超低高度からの動画などで世界を驚かせた後,6 月 11 日ついに GILL クレータ付近に制御落下しました.
また 6 月 30 日には「おうな」の停波運用が行われました.

落下時の閃光はオーストラリアやインドの天文台で捉えられたそうです.

かぐやが撮影した動画は数え切れず,管理人も全部書き下す気力がもうないのですが,YouTube JAXA チャンネルなどで見ることができます.ラストショットはすごいです.本当に最後の最後までデータを送ってきたのですね.

かぐやのデータからは,月面に溶岩チューブとよばれる縦穴が見つかるなど,興味深い発見が次々と続いています.春山さんの ISAS メールマガジンの記事は,熾烈な国際競争の厳しさと世界初の発見の興奮という,研究者のエキサイティングな人生を垣間見せてくれます.

そして今月からはいよいよ観測データ (L2 プロダクト) が一般に提供されました.

素晴らしいミッションでした.ハラハラドキドキの「のぞみ」や「はやぶさ」もwktkしますが,「かぐや」のように安心感のある宇宙探査の姿,これこそ宇宙探査ミッションが本来あるべき姿だと思うのです.それだけ技術も成熟してきたのでしょう.アウトリーチの力もまざまざと実感しました.開発・運用チームの皆様,本当にお疲れ様でした.かぐやの成功が,日本の宇宙探査の追い風となることを切に望みます.

JAXA's 025〜028 号

こちらも出てます.

やはり今年は宇宙飛行士と HTV の話題が多いですね.028 号はすざくの見開き特集もあります.

ISAS ニュース 336〜343 号

出てます.

4 月号は「あかり」特集.かなりの読み応えです.7 月号の「かぐやが月に還った日」はじーんときます.同じく 7 月号の「紙袋から水星へ」も面白いですね.宇宙開発におけるロシアの強さを裏付けるのはこういう思想なのでしょう.NASA では多分考えられない.

ロシアのエンジニアが性能試験のために初めて試作機を携えて来日した際には,雨の中,機器を紙袋に入れて移動しているし,次のときにはスーパーのレジ袋でした。なぜこんな袋で運ぶのかと聞いてみたところ,「これくらいで壊れるようなら,水星に行く前に壊れるよ。これは大丈夫」という返事が返ってきました。

また同じく 7 月号の最後には小型科学衛星 1 号機 SPRINT-A のミッションマネージャの方の話も載っています! 9 月号は的川先生はじめ日食を見に行かれた方々の手記.最近の「宇宙・夢・人」は,旧 NASDAJAXA 筑波から相模原に異動された方が多いですね.文化の違いを乗り越え,宇宙研の伝統を尊重しつつ新たな歴史を作っていこうと努力しておられる方々の話は興味深いです.

はやぶさなど科学衛星の名前の由来が毎日新聞記事に

毎日に面白い記事が出ていました.記者は,はやぶさタッチダウンの頃にも良い記事を書いておられた元村有希子さん.

火星探査衛星「のぞみ」(98年)も一例だろう。トラブルで火星の軌道に入ることはかなわなかったが、初の惑星探査機開発に苦闘した関係者の思いを込めた。「新幹線と同名だからJRに通告しなくていいか聞いたら、西田篤弘(旧宇宙科学研究所)所長が『新幹線の100倍速いんだからいいだろう』と言ったのを覚えてます」と的川さん。

JAXAの阪本成一教授が「その奮闘を見守ってほしい」と話す「はやぶさ」は、来年の帰還に向け、現在地球を目指す。03年に打ち上げられ、小惑星イトカワ」に到達し、金属球をぶつけて地表の破片を地球に持ち帰る任務を負う。上空から狙いを定め、獲物をつかんで飛び立つハヤブサのイメージから命名された。事前投票では「アトム」が圧勝。「鉄腕アトム」が打ち上げと同じ03年生まれで、自律航行する同衛星をロボットに見立てた案だったが、「原爆を連想させる」とお蔵入りになった。

一方、今秋、国際宇宙ステーションに物資を届けた日本初の無人補給機「HTV」に愛称はない。JAXAは「使い捨てだから」と説明する。

個人的には,HTV も 1 機ごとに名前をつけてほしいなあ.ESA の ATV 1 号機がジュール・ヴェルヌといういい名前をつけているのがうらやましいですね.使い捨てと言われると,他の衛星だって使い捨てだし,何しろ宇宙に数日しかいなかった OREX や VEP もちゃんと「りゅうせい」「みょうじょう」という良い名前をもらっているのだから….

使い捨ての国産ロケット「H2A」は、デビュー(01年)に合わせて99年、公募で「金太郎」という愛称が内定したが、前身のH2ロケットはトラブル続きで、命名が見送られた。

これは知らなかったなあ.

なお,はやぶさの名前の由来については,2ch でこんなコピペが出回っていました.

心の琴線に触れる話ですが,少なくとも JAXA の公式見解ではないという見方が強いようで,公式には上記の毎日の記事のようにサンプルリターンの様子からということだと思います.そもそも,イトカワにその名がついたのははやぶさ打上げ後なので,どう考えても後付けでしょう.ただ,的川先生の講演ではこの一式戦闘機「隼」,寝台特急はやぶさ」の話も挙がっていたようで,多分,公式ではないけれども多少あやかってはいるんだろうなあと思っています.

ちなみにこの話はニコニコ大百科にも非常に詳しく載っています.GJ!


追記 (2009-11-29):はやぶさの名の由来はここも非常に詳しいですね.

はやぶさカプセル回収準備が着々と進められる

はやぶさは来年 6 月に地球に帰還し,カプセルをオーストラリアのウーメラ砂漠に落としますが,そのカプセルの回収準備が宇宙研で着々と進められているようです.

ASTRO-G プロジェクトの川原さんによるコラムです.はやぶさチームだけでなく,ASTRO-G など色々なプロジェクトの人を総動員しているのですね….「方探班」…ISAS 伝統の「○○班」ですね.wktk

この重要な方向探査に用いるアンテナは非常に簡素なものです。家庭で使用しているテレビ受信用のアンテナ(八木アンテナ)を水平方向に2台並べて固定し、そのアンテナをローテータ(回転装置)に取り付けて、全体をアンテナ架台に固定すれば完成です。

実際のカプセル回収の舞台となる砂漠へ赴き、方探実験を実施して参りました。

おなじみ「宇宙の電池屋」曽根さんのコラム.相変わらず熱い.そして泣かせる.…でも「読書感想文」の部分,「宇宙兄弟」を読んでないと正直わけわかめかも知れないww

 訓練を通して個人的にバリバリ感動したのは訓練用の模擬カプセルからのビーコンを捕らえた時だった。
「そうだ、この信号を、来年は絶対にツカマエル!」

ISAS ニュースにも「方探システム機能確認試験」の話題.ウーメラは過酷な環境のようですね.


こんな研究会も開催されていたようです.個人的にはライター喜多充成さんの「フィナーレの火に、油を注げ ―― よりよきアウトリーチのために」という講演が気になりますww

JAXA タウンミーティング@大阪で川口プロマネが講演

7 月のことになりますが,JAXA タウンミーティングが大阪で開催され,はやぶさプロジェクトマネージャの川口教授が「はやぶさ−地球への帰還をめざして.目下奮闘中」というタイトルで講演されました.

参加者:後継者不足、あるいは育てるということの話もありましたが、例えば「はやぶさ」の帰還が真夜中ではなく昼でしたら、NHKとかあるいは民放さんにスポンサーになってもらい、学校の授業のときに生中継をやってもらう。こういうことで夢を与えるということは、ものすごく大事だと思います。
(略)
川口:(略)夜は昼に変えられないのですが、インターネットを見ていただくというのはひとつどうでしょう。「はやぶさ」の着陸の運用が、午前5時か6時という時間だったのですが、世界中の方に見てもらいました。インターネットでごらんいただくと、ありがたいと思います。

川口:(1)打ち上げ当初の考え方は、今と基本的には変わらなく、要は、母船は化学エンジンが生きていれば逃げられます。もともとは逃がすつもりでした。さらに、もう一回別の場所に行ける計画も頭の中にはありました。しかし、今ではもう無理です。イオンエンジンは瞬発力がないため、カプセルを離してから残りの時間で大気への突入を避けることは不可能です。残念ながら、今回は大気の中に入ってしまいます。ただ、もともとは大気の中に入れるつもりはありませんでした。
だから、もう少し大きめの探査機をつくり、時間を1年半ぐらいかけると、例えば太陽と地球の間のラグランジュ点というところに置くとか、置いてもう一度回収するということができたはずですし、できるはずです。そういう計画も頭の中にはありましたが、今回はできません。

川口:(1)アドバンテージを保てるか、外国の状況はどうかというと、外国は虎視眈々と「はやぶさ2」が立ち上がらなければ自分たちがやろうという構えです。我々がよく外国で聞かれるのは「はやぶさ2」の状況はどうですかと、そのことしか聞かれません。ヨーロッパに行っても、アメリカに行ってもです。
NASAは7月にニューフロンティアというプログラム計画の締め切りがきますが、その中には幾つもの提案が出ているのは知っています。同じ天体に向かう提案も出ています。ヨーロッパも同様です。それから、この夏から始まるNASAの提案プログラムの中にも、名乗りを挙げようとしているグループがあります。ですから、是非知識伝承ができるように、これを立ち上げていかないとと思っています。

他のタウンミーティングの報告もあがっており,それぞれ興味深いものとなっています.