Mars Global Surveyor 通信途絶の原因

ここへ来て人為ミスではないかという話が出ています.

で,この説明は不正確だということで,中の人に近いところからいろいろと興味深い話が出てきています.

地上から人間がメモリ管理を行っているというのには仰天しましたが,本当に

As with most spacecraft failures, this one seems to involve a long chain of unfortunate events leading eventually to one battery radiator being pointed at the Sun

ということで,火星探査機のぞみの悲劇の連鎖を思い出しました(あれは人為ミスではないですが).はやぶさの 2 回目タッチダウンでセーフモード移行コマンドが紛れ込んでいたという話も,人為的かどうかはわかりませんが何か本当にちょっとしたことの連鎖から生じたものなんじゃないかという気がします.

それと,MGS の古いアーキテクチャを理解する人間が年々減っているという問題も見過ごせません.日本から見るとウハウハ状態のように見える NASA も,思った以上に深刻な問題を抱えて苦労しているということですね.宇宙開発の黄金期を担った人材の一斉退職(一種の 2007 年問題),経験の浅い新人一人に全てを任せざるを得ない状況,ヒューマンエラーを極めて誘発しやすいインタフェース,技術やノウハウの不完全な継承.NASA に限らず JAXA,さらに世界の宇宙業界全体,もっというと技術の現場全体に普遍的な問題だと思いますが,宇宙業界の場合はそれが特に顕著ですね.


ともかく,いろいろな意味で,他人事ではない話です.